2024年総まとめ!手描き×AIの1年を振り返る

2024年12月31日

2024年の手描き×AI界隈

2024年は1月にSDXLの高性能なイラストモデル「Animagine XL 3.0」がリリースされ、これをきっかけにSDXLが急速に普及しました。

このモデルの登場により、さまざまなLoRAやControlNetモデルが次々と開発され、上半期はまさにリリースラッシュの年となりました。

また、下半期にはAI-Assistantやcopainterなど、手描きを補助するAIツールのアップデートが相次ぎ、手描きイラスト制作へのAI活用がますます容易になりました。

この1年の動向を振り返り、2025年への期待を読者の皆さんと共有します。

2024年の手描き×AI月別ハイライト

1月

100%ムックシリーズ AIイラストテクニックがまるごとわかる本』(晋遊舎)で、当時β版だったCoPainterで制作されたイラストが表紙に。

手描き×AIのイラストが商業出版の表紙を飾ったのはこれが初ではないでしょうか?本の中でも表紙イラストの制作過程が紹介されています。

3月

背景とキャラが別々に生成できる「LayerDiffusion」(LayerDiffuse)がwebUI Forgeの拡張機能として公開。

それまでは1枚の状態でしか生成できなかったため画期的なこととして注目を集めました。

4月

作家本人の絵柄のみを学習させるAIサービス「ピュアモデルAI」の取り組みが発表。

里中 満智子先生をはじめ漫画家の先生方の学習サンプルが公開され話題になりました。

0から学習できる、中身が空っぽ(実際は小さめのランダム値)のSDXL公開。

ピュアモデルAIが話題になった流れから公開されましたが、実際に個人で学習できた方はいたのかな…?

お絵描き補助AIアプリ「AI-Assistant」公開。

それまでにあったA1111などのWebUIより遥かに簡単に使えるアプリで、「このアプリのおかげでAIを試すことができた」などの意見もあったようです。素晴らしい!

週刊アスキーで野火城さんによる「実録:AIで描く漫画の実際」連載開始 。

AIずきんで有名な野火城さんの新作・浦AI太郎の漫画とともに、その漫画の制作方法などについて赤裸々に語られました。手作業の部分が多すぎて「このクオリティならそうだよね」と読者を震え上がらせました。

5月

画像の照明効果を編集できるツール「IC-Light」公開。

例えば左からの光を右からに変更するというようなことが可能となりました。イラスト系では効果が高くなかったのですが、今後に期待する声が多く見られました。

線画に色を塗れるControlNet「ControlNet-LineartXL」(Katarag_lineartXL)公開。

5月~6月ごろはSDXLのControlNetの学習が盛んに行われていて、その中のひとつがこのlineartです。それまでSDXLのControlNetは制御が効きづらかったのですが、このlineartはCN元画像に忠実で「SDXLでもこれができるのか」と驚きました。

このCNを使った作例の記事はこちら:

神汎用ControlNet「CN-anytest」V3のcontrolLoRA版が公開。

前身のanystyleから驚きをもってその存在を認められてきたanytest v3の最新版です。(ちなみにv2とv3のリリースも5月)色々なことができすぎて紹介しきれない、魔法のようなControlNetモデルです。

入力した線画に忠実に色を塗るシステム「starline」公開。

線画にAI着色する場合、lineart等のControlNetを使用しても、ピクセル単位で見るとどうしても少しずれてしまっている状況でした。しかしstarlineはピクセル単位で入力線画に忠実に生成できるシステムで、今後の発展に期待が寄せられています。

6月

手描き支援のAIサービス「copainter」が正式リリース。同月に「ペン入れ」機能がリリース。

βテストが続いていたcopainterがついに正式リリースされました。オープンβ期間中には「チケットを使い果たしてしまった」「早く有料版を使わせてほしい」といった声が多く寄せられるほどの人気ぶりで、正式リリースに際しては喜びの声が数多く聞かれました。

copainterの紹介記事はこちら:

神汎用ControlNet「CN-anytest」がV4にバージョンアップ。

anytest v4はv3よりもさらに汎用的な使い方ができるようになりました。より忠実なv3と併せて、手描き×AI界隈では必須といっても過言ではないControlNetモデルとなっています。

バケツ塗り風LoRA「sdxl-bucket_flat」公開。

下塗りを生成するのに便利なバケツ塗り風LoRAが公開されました。バケツ塗り風LoRAは他にもあると思いますが、個人的にはこれが一番使いやすいのではないかと思います。

ラフから線画を生成するアプリ「sketch2lineart」公開。

AIを動かせるスペックのPCを持ってない人のために作られた無料のwebアプリです。優しすぎる。

コピー機LoRAが簡単に作れるアプリ「CoppyLora_webUI」公開。

コピー機学習法で画風を学習できることを発見したとりにくさんが、その方法を簡単に実践できるように作ったアプリです。自分の絵を学習させたいけれど技術力が追いつかず困っていた私のような人たちにとって、大いに喜ばれるツールとなりました。

7月

お絵描き補助AIアプリ「AI-Assistant」がV4にバージョンアップ。

2024年末現在「AI-Assistant」の全体公開されているバージョンです。「CoppyLora_webUI」で作った自分絵LoRAを読み込むことができるようになり、さらに便利になりました。

完成したイラストから疑似的にタイムラプスを生成するツール「PaintsUndo」公開。

人間の描画動作を推定するAIです。その特性から、さまざまな意見や議論を呼びつつも、多くの注目を集めました。未来への可能性を感じさせるこの技術については、さらに便利なAIの開発を期待する声も聞かれました。

8月

1枚の画像から3Dアセットを生成できるAI「Stable Fast 3D」公開。

この技術でキャラクターや背景の3Dモデルが簡単に生成できれば、漫画制作やアニメ制作の現場で重宝されるのではと話題になりました。生成時間を短縮するために一貫性に問題があるとの指摘もあり、今後のバージョンアップでの改善が期待されています。

ベースカラーが白になって陰影だけ生成できるLoRA「sdxl-testlora-plainmaterial」公開。

影LoRAはいくつかありますが、個人的に一番好きなのがこれで、AIならではの画力がある影LoRAです。ベースカラーがちゃんと白くなるという点でも他のLoRAより優れています。

お絵描き補助AIアプリ「AI-Assistant」がV5にバージョンアップ。

2024年末現在「AI-Assistant」の最新バージョン(限定公開)です。前段のplainmaterialや、棒人間からポーズ人形が生成できる機能が追加されています。

9月

手描き支援のAIサービス「copainter」で「下塗り」「高解像化」機能がリリース。

「ペン入れ」機能以来の大きな機能追加であり、サービス全体のさらなる発展が期待される嬉しいバージョンアップとなりました。

10月

AICU Magazineでわらさんによる「ウワサの大型新人」が連載開始。

AICU×BlendAI特別協賛「デルタもん4コマ漫画コンテスト」にて「AIの心得」で優秀賞を受賞されたわらさんが、AICU Magazineで連載を開始されました。作品はcopainterを使用して制作されており、AIを活用しつつもわらさん独自のタッチも際立つ作品となっています。AIを取り入れた新しい制作スタイルとして今後さらに注目されることでしょう。

手描き支援のAIサービス「copainter」で「画像変換」「陰影」機能がリリース。

i2i+CNのような機能「画像変換」、光源を指定して陰影を生成できる「陰影」の機能が追加されました。特に「陰影」は一般的なAIサービス・AIアプリには搭載されていない機能であり、制作支援に特化しているサービスならでは。(なお、唯一「AI-Assistant」には似た機能があります。)

copainterの「陰影」機能を紹介した記事はこちら:

棒人間から生成できるControlNet「posetest」がv2.1にバージョンアップ。

棒人間から完成イラストが生成できるControlNet「posetest」の最新バージョンです。openposeのように指定の色を使うなどの制約がなく、手描きの棒人間から生成できます。

11月

手描き支援のAIサービス「copainter」で「背景変換」機能がリリース。

背景に特化した線画生成機能が追加されました。従来のペイントソフトに搭載された線画機能とは仕上がりが違うため、新しい選択肢が増えた形となり、その精度の高さにも喜びのコメントが見られました。

コピー機LoRAが簡単に作れるアプリ「CoppyLora_webUI」がV2にバージョンアップ。

v1では悪用防止のためにかなり制限があったCoppyLoraですが、v2では自由度が格段に向上し、さまざまなコピー機LoRAを作れるようになりました。この自由度の向上により、LoRAの可能性が一気に広がりました。これは、AIを活用した創作活動の表現の幅を大きく広げる進化といえるでしょう。

12月

手描き支援のAIサービス「copainter」で「線画」機能がリリース。

この機能は「ペン入れ」よりもAIに任せる度合いが高く、ずっと手描きで制作してきた人たちにとっては受け入れるのが難しい場合もあるかもしれません。しかし、AIの恩恵を最大限に受けられるのは、AIに任せることができたときです。そうした意味で、この「線画」機能の追加は、copainterの進化において大きな意義を持つと言えるでしょう。

画像の照明効果を編集できるツール「LuminaBrush」のデモが公開。

おそらく「IC-Light」の流れを汲んで開発されたツールと思われますが、より直感的に使えるよう改良されているようです。現在はデモ版の公開のみですが、今後イラスト制作に活用できるようになれば、差分の作成などに大いに役立つ可能性があり、期待が高まります。

2024年に注目されたクリエイターたち

野火城さんと「ゼロイチ、「ニ」」

引用元:https://note.com/nobisiro_2023/n/nb64258d32855

 第三回AIアートグランプリにて優秀賞を受賞した野火城さん。その受賞作「ゼロイチ、「ニ」」はAIと手描きを活用したマンガ作品で、多くのクリエイターに刺激を与えました。野火城さんは様々な漫画とそのハウツーをX(旧twitter)やnoteで発表されていますが、特に、4月から全5回に渡った週刊アスキーでの連載は、AI活用の幅広い可能性を示しました。

野火城さんは前述の連載以外に、ご自身のnoteでもAIを活用した漫画も制作について発信されています。AI導入以前からプロとして活躍されていることもあり、クリエイターとしての視座が高く、多くの学びを得られる内容となっています。

野火城さんのnoteはこちら

KALINさんと「花夢」

引用元:https://gmo-design-award.com/products/vd002.html

 GMOデザインアワードのビジュアル表現部門(学生カテゴリー)で優秀賞を受賞。AIと手描きを組み合わせて作った「花夢」という動画作品が高い評価を受け、AIアートと手描きの融合の新たな可能性を示しました。また、「花夢」はKALINさんの卒業制作でもあり、「東京藝術大学 卒業・修了作品展」が開催された2024年のはじめにも非常に話題になりました。

「花夢」は画像生成AI、動画生成AI、AI+手描きの動画と3種類を比較展示するという作品です。そのうちAI+手描きの動画について、絵コンテは手描き、背景の部分はt2i生成+調整で制作し、キャラクターの部分を手描きで作られたようです。3種類の比較動画が面白いので、まだご覧になってない方はぜひ下のyoutubeからどうぞ。

KALINさんのyoutubeより「AIと制作 花夢 2023」

漫画家の先生方

2024年に限らず常に注目されていますが、すがやみつる先生、うめ先生、だろめおん先生といったプロの漫画家の方々がAIを活用されている様子も、X(旧Twitter)で頻繁に見られました。

2025年への期待と見通し

背景生成のさらなる進化

 現状、AIで生成された背景には構造的な不整合が見られることが多いですが、2025年にはこれが大幅に改善され、建物のパースや光と影の表現がより正確になればと期待しています。これにより、手描きイラストの背景作成がさらに効率化されるでしょう。

主要お絵かきソフトへのAI機能搭載

 現在、多くの主要なペイントソフトは生成AIに懸念を抱いている方々に配慮して、AI機能の搭載を避けています。しかし、2025年にはその流れが変わり、色塗りや構図提案など、機能を限定した形でAI補助機能を搭載するソフトが登場する可能性を考えています。そうなれば、手描き派とAI活用派の双方が満足できる環境が整備されるかもしれません。

クリエイターの作業スタイルの変化

 AIによる作業補助がより精密になり、クリエイターはアイデア出しや全体の構成に集中できるようになるでしょう。特に、AIと手描きを組み合わせた作品が一般化することで、新しい表現の可能性が広がると考えられます。

最後に

2024年の進化を振り返りながら、2025年にどのような技術が登場するのか、今から楽しみですね!あなたは2025年にどんな手描き×AIの未来を想像しますか?

最後までお読みいただきありがとうございました。2025年も手描きとAIが生み出す新たな可能性を一緒に楽しんでいきましょう!

その他まとめ

Posted by 令五