全部AIで描ける時代に、みんなどうしてる?2025年の漫画制作まとめ

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この記事は、生成AI Advent Calendar 2025へ参加させていただいています。

2024年にも同じアドベントカレンダーに「漫画制作にStable Diffusionを使ってみた」という内容で参加させていただきました。1年経ちましたので、今回はその2025年版の内容です。

目次

2025年の漫画制作とAI

2024年から2025年で一番変わったことといえば、やはりNano Bananaの登場だと思います。

Nano Bananaは Google の画像生成 AI で、それまで技術的なハードルが高かった「一貫性の保持」が、かなり簡単にできるようになりました。さらに、ChatGPTなどの文章生成AIに指示するときのような自然言語の命令が通るようになり、「描いてほしいもの」ではなく「どうしてほしいか」を指定できるようになりました。これは、作り方の感覚が変わるという意味で、本当に革命的な変化です。

文章生成AIのような指示が通るようになったことで、単に絵を出すだけでなく、コマ割りやデザインといった部分まで任せられるようになりました。Nano Banana Pro にいたっては、セリフ入れまで日本語で行うことができます。

このおかげで、漫画を描いたことがない人でも、AI だけで漫画を作ることができるようになりました。一方で、もともと漫画を描いていた人から見ると、やはり行き届かない部分がまだ多くあります。そういったところは、人間が自分で手を入れる必要があります。それでも、とにかくNano Banana Pro のおかげで、「これは AI に任せられる」と言える範囲が一気に広がったのは間違いないと感じています。

2025年の制作フロー全体図

まず最初に言っておきたいのが、私はプロではなく趣味の漫画描きだということです。アマチュアレベルの話になりますので、あくまで一例として読んでいただければと思います。いまだに AI を活用した漫画制作に「これがスタンダード」と言える形はないと思いますので、その前提で読んでください。

さて 2025 年であっても、プロット、ネーム、作画といった制作フローの大枠自体は変えていません。ただ、各工程の中身が変わりました。以前は作画部分にのみ AI を使っていましたが、今はほとんどすべての工程で AI を使うようになりました。

プロット:ChatGPT
ネーム:Nano Banana Pro
作画:Stable Diffusion
背景:Qwen-image-edit
表紙・お品書き:Nano Banana Pro

以下では、それぞれの工程について書いていきます。

プロット:LLM × プロジェクト機能で世界観管理が進化

2024年後半、ChatGPT にプロジェクト機能が登場しました。これは、AI に参照してほしいデータを前もって入れておける仕組みです。キャラクター設定やストーリーラインなどのデータを入れておくと、前提を共有した状態で AI と対話できるので、すぐに続きから始められて便利です。

それまでも GPTs や Gemini の Gems といった似た機能はありましたが、プロジェクト機能が違うのは、それらをフォルダでまとめて管理できるところです。これによって、その他の雑多なチャットに紛れてしまうこともなく、同じ世界観を共有したチャットだけをまとめて管理できるようになりました。

使い方としては、自分が ChatGPT に「こうなって、こうなって、こうなる」という展開をひたすら話していきます。そのうえで、それが共有しているデータと矛盾していないかをチェックしてもらったりしています。また、構造で悩んだところや、ちょっとした知識を質問したりする時にも、世界観が共有されているとそれに沿って答えてくれるので助かります。

特別なプロンプトを使っているというよりは、友達に話すような感じが近いかもしれません。Cursor という、ドキュメントを管理しながら AI が使えるツールも試してみましたが、雑談ベースで話しながらプロットを組み立てるのであれば、ChatGPT の方がやりやすいと感じたので、プロット作りは ChatGPT で行っています。Cursor は、完全に道具として AI を使いたい人には非常に便利なツールだと思います。

ネーム:Nano Banana pro の登場で革命が起きた

2024年までも、AI で 1 ページの漫画っぽいものを作ることはできました。Stable Diffusion や niji・journey などで(内容は指示しづらいものの)コマ割りされた画像は作れましたし、2025年に入ってからは ChatGPT の画像生成やNano Bananaでも、指示した内容に沿った簡単な漫画っぽいものは作れました。
そこへ登場したのがNano Banana Pro です。プロンプトへの追従性が非常に高く、キャラクターの一貫性もずば抜けており、今 AI 漫画を作るならNano Banana Pro 一択という雰囲気になっています。

これを私はネームとして使用しています。私の場合、正直なところ、自分で描くよりも AI で作った方がいいネームができることすらあります。ただ、自分で描くときは、一度描いたネームを直すのは面倒で、なかなかやる気になれませんでした。今はまず AI に描かせて、そこから推敲する形にできたので、その分の労力がそのまま浮いている感覚があります。これはネーム 1 回分を描くのがまるまるなくなったのと同じで、かなりの労力削減になっています。

作り方としては、ChatGPT と一緒に作ったプロットを Gemini に渡し、それをネーム用の文字コンテのようなものに直してもらいます。そして、それをNano Banana Pro で生成します。

作画:ネーム→Stable Diffusion(LoRA)で最短ルート

Nano Banana Pro で作ったネームは、そのままだとどうやっても自分の絵ではありません。そこで、Stable Diffusion で i2i して、自分の絵柄に寄せていきます。具体的には、ネームからコマごとに切り出して、それを元に AI に清書してもらう、というやり方で行います。これは自分の絵を学習させた LoRA や anytest を使っており、2024年までに行っていたこととあまり変わりません。

背景:3D × 画像生成で一貫性を担保するワークフロー

背景に関しては、ここまでの流れのままではあまりうまく作れないので、全く別で作っています。室内であれば、3D のソフトで作ったものを Qwen-image-edit で仕上げることが多いです。ただ、広くて複雑な風景になると、今のところは画像生成だけに頼ってしまっていて、どうしたらいいか決めきれていません。学校のように 3D モデルがあるものは 3D モデルを使えばいいのですが、そうではない背景については、まだ試行錯誤している段階です。

左側のイラスト化で足した小物等を、右側生成時に参照することで再現。

3Dを使わず 1 枚の画像から Qwen-image-edit で角度を変えることもできますが、漫画に使う場合、もっと細かく制御したい場面も多いです。背景に AI を使うことは、多分かなり多くの絵描きが受け入れられると思うので、この部分がもっとコントロールしやすくなることを期待しています。

また、Nano Banana Pro では全天球画像を作成することができ、これもある程度は使うことができます。ただし、撮影者の立ち位置を変えたり、鳥瞰図を作るのが私には難しく、重要度の低い背景で使うに留まっています。

↑Geminiが作ってくれたビューワ。これをスクショ→イラスト化して使用。

表紙・お品書き:Nano Banana pro が強すぎる

漫画描きの場合、半数ぐらいの人はおそらく 1 枚絵が苦手なのではないでしょうか。特にカラーの絵です。この場合も、Nano Banana Pro がめちゃくちゃ役に立ちます。

画像生成でも 1 枚のイラストはもちろん生成できましたが、「どんなイラストがいいか」を考えるのは人間でした。それを AI がやってくれるのがNano Banana Pro です。私自身、表紙を机の上に並べると似たような絵ばかりになってしまうことが多く、すごく苦手意識がありましたが、そういったところもNano Banana Pro がだいぶ助けてくれています。

プロットや、もっと短い要約からでもかまいませんが、そういったものを渡して AI に表紙を考えてもらうことができます。しかも良いのは、デザインまで含めて提案してくれるところです。ロゴやレイアウトをそのまま使うのではなく、自分で作り直すにしても、お手本があるだけでだいぶ楽になります。イラストやデザインは漫画とは別のスキルなため、そこまで手が回らないと感じている人には、特に向いていると思います。

同人誌はだいたいお品書きも必要なので、そのお品書きも作れますし、スペースの飾り方の案も出してもらえます。イベント前の短い期間だけ使うようなお品書きや告知画像のようなものは、AIで作ってしまうのが効率的だと感じています。

まとめ:どこまで自分でやるかを選べるようになった

ここまで書いてきたことは、あくまで私個人の一例にすぎません。

今回紹介したように、プロットからネーム、作画、背景、表紙・お品書きまで、かなりの部分を AI に任せることもできますし、極端な話をすれば、全部を AI だけで作ってしまうこともできます。逆に、全部を自分の手で描きたいのであれば、当たり前にそれでもいいのです。

その中間として、「ネームだけ AI に任せる」「表紙の案出しだけ AI に頼む」「背景だけ AI にしてキャラは自分で描く」といったように、こだわりのある部分だけを自分でやって、その他を AI に任せる、という選び方もできます。

大事なのは、「どこまで自分でやるか」「どこから AI に任せるか」を、作り手の側が自分で決められるようになったことだと思います。AI が登場したことで、作業そのものが置き換わるだけではなく、そもそもの選択肢が増えました

全部 AI に任せてもいいし、全部自分で頑張ってもいいし、その間を自由に行き来してもいい。そういう意味で、「すごい未来が来たな」と感じながら、私は 2025 年の漫画制作を楽しんでいます。

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